無住心言術道場第19回

無住心言術道場第19回「流通問題と、雇用と、企業の利益率」。今回も、無住心剣術の精神で難問に針屋忠道、突貫します。
 今回は流通問題の要点を二つに絞ります。
 1、労働者の権利と労働環境と立場。
 2、企業の立場。
 です。
 基本的には、流通問題では、トレードオフの関係が存在します。
 1、労働者の権利と労働環境と立場を考えた場合。企業の収益が減少する。
 2、企業の立場を考えた場合。労働者の権利と労働環境と立場が悪化する。
 経済学で使われるゲーム理論では、利害関係が成立する、負の相関である、トレードオフの関係の解決を、天才数学者ジョン・ナッシュが考案したナッシュ均衡の概念で説明します。
 ですが、このナッシュ均衡は現実世界に適用した場合。
 根本的な問題の解決には至らないケースが存在します。
 日本では「痛み分け」などの、日本語特有の言い回しで、勝敗を不透明にする傾向があります。
 ゲーム理論のナッシュ均衡も、次善の選択肢で在る、セカンドベターの選択肢で、利得を不透明に近い形で、折衷型の、調整的な、中間の、解決策を提示します。
 「お茶を濁す」と言う、現状を誤魔化す、日本語の表現もあります。
 この、流通の問題は、企業の収益の問題と直結します。
 具体的には、現在の日本の流通問題では、流通の一線で働く、配送の担当者に負担を強いています。この負担を強いる理由は、企業の立場としての収益の最大化を目指していくためです。
 企業が、人件費を削る名目で、労働者である、配送の担当者に過剰な、配送のノルマを強いる、現状があると考えられます。
 簡単な解決策は、流通の一線で働く、配送の担当者の人数を増やすことです。
 ですが、この場合、人件費の上昇に基づき、企業の収益が悪化します。
 結果的には、流通の第一線で働く、配送の担当を行う、労働者の給料が減少します。
 今回は、流通業界で、熟練工であるホワイトカラー層の労働者として、企業内の社内政治に邁進している正社員層の給与削減にメスを入れる案は論じませんが。
 現在の、日本の流通業界で、起きている問題は、企業の収益の最大化の問題です。
 企業の収益が少なくなれば、設備投資などに回す資金が無くなり、市場の中での競争力が落ちる可能性が在ります。
 ですが、流通の一線で働く、労働者の権利や労働環境の改善は避けられません。
 流通業界が、極端な、ブラック職場となった場合。体の健康を過労で壊すまでの、一定期間は高所得の職場として、良い給与がもらえても。体の健康を害すれば、結局は離職する事になります。
 この場合、流通業界で働く、熟練工で在るホワイトカラー層の労働者は、別のホワイトカラーの職種や企業に転職するだけで在り、流通の第一線で働く、配送の仕事への従事は、避ける結果が読めます。
 この場合、流通業界は人が集まらなくなり、流通の第一線で働く、配送担当の労働に従事する人達を集めるためには、逆に人件費は増加する事が考えられます。そして、ノルマも増える可能性が考えられます。配送担当の労働者が、流通業界に集まらなければ、現在、懸念されている「流通崩壊」が発生する可能性が高まります。
 今回の要点は、労働者の権利と労働環境と立場の改善、そして、企業の収益の問題を、対立する利害関係として論じました。
 別の機会に、別のテーマで流通問題を論じます。
 では、筆を置きましょう。


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